2ヶ月滞在したネパール。
その2ヶ月の間にネパールは劇的に変化した。

日に日に高まる物価!
日に日に上がる燃料価格!
日に日に閉まるレストラン!

日本ではなかなか情報があがってきていない、現地で滞在したから分かるネパールの今の姿をレポートする。(2015年11月25日までの情報)


ネパールが燃料・医薬品不足になっている理由


事の発端は、2015年9月20日に公布されたネパールの新憲法だ。
公布するまで7年の歳月をかけて、新憲法は州連邦制(7州の連邦による世俗国家)を採用した。これにより、「多民族、多言語、多宗教」を認め、多様性が保障された。
しかし、この新憲法をめぐり、一部の少数民族「マデシ」が「州の区分けで地域が分断される可能性がある」という理由から反発を繰り返し、大きな問題となった。

地域の分断がそんなに大きなことか?


と思ったが、これには政治的要因が大きい。
州の新たな区割りによって、マデシの議席が十分に確保できないのだ。
そこで登場したのが、隣国インド。インドが親インド住民の「マデシ」の権利擁護を要求してきたのだ。

なぜインドが・・・?


ネパールの少数民族「マデシ」にインドが肩入れする理由は、インド東部のビハール州に血縁関係を持つ人が多く、言語や文化などを共有している。つまり、インド目線で言えば、ネパール内でインドにとって政治的に有利な働きかけをするマデシの政治力確保は重要課題の1つなのだ。インドは、ネパールを内輪扱いし、政治的介入をし、いつかは事実上支配しようと目論んでいるのだろう。
ネパールは、大国の中国とインドに挟まれ、ネパールも隣接するチベット問題の際にも、ネパールは蚊帳の外、中国とインドで全てを決められてしまっていた。

そんな中、今回の新憲法は、「マデシ」、「インド」の意見を却下し、公布に至ったのだ。すると、インド側が・・・。

「インド国境から物資は通さない!経済制裁だ!!」


はっきりと経済制裁とは言わず、インド政府はこう表明している。

「インドの貨物業者がデモによる治安上の懸念に苦情を訴えている。そのため、仕方なく国境を封鎖している」

全く・・・。
インドと中国に挟まれたネパールには資源も技術もない。
輸入に頼っているのだ。
インド側から輸入(インフラ関係)を制限されると、物資が不足する。
ガソリン、ディーゼル、ガス、医薬品・・・。

はっきり言って、かなり危機的状況だ。
そんな状況でも、ネパール人は心穏やかな人が多く、仕方がないと言い、ガスやガソリンを買うために長蛇の列に並んでいる。

DSC0638077.jpg



実際ネパールは鎖国状態なのか?


ネパール鎖国一歩手前まで来ていると言われている。
ネパールの陸路の国境は中国とインドの2つ。
その2つの国の国境はどうなっているのだろうか。

中国側


中国とネパールの国境にある吉隆の通関は10月13日に一応再開した。
それまでは地震のため閉鎖されていたが、インドとの関係悪化のため、急遽国境を開いたという形だ。でも、いつ閉鎖されるかは分からない。

インド側


上記の理由で経済制裁が行われ、9月中旬からネパール・インド間のほぼすべての国境で、物資の行き来が制限されている(人は問題ない)。
物資と言っても、全ての物資が制限されている訳ではない。とくに、インフラ関係のガソリン、ディーゼル、ガス、医薬品と言った生活する上で必要なものが、入境を制限されている。全く入ってこないわけじゃないが、通常の約25%に制限されている。25%の多くは闇市場に流れ、一般家庭には全く入って来ないため、混乱しているのだ。


以上より、人の往来はできるが、物資の観点から「鎖国一歩手前」と言わざるを得ない。
旅行者は治安の点だけ注意すれば、問題なく今のところ国境は通過できる。



ネパールの治安が悪化している?


外務省の海外安全ホームページに記載されている内容の転記(四角い枠内)

1.ネパールでは、9月20日の憲法公布をめぐり、南部のインド国境地域を中心に、マデシ系グループ(ネパール南部の民族系グループ)による抗議活動やゼネストが継続しています。そのため、インドから各種物資(特にガソリンやガスなどの燃料)を積載した車輌がネパールへ入ることができず、ネパール国内における供給量が激減し、大きな混乱が発生しています。ネパール国内の公共交通(タクシーやバスなど)及びその他交通手段の確保が非常に困難な状況で、更に、南部では通行車両がしばしば抗議グループから襲撃される事件も発生しています。また、抗議活動が殺人、放火、暴行等に発展したり、爆弾等火器が使用されることもあるため、南部地域では、旅行者といえども事件や事故に巻き込まれる危険性があります。これら地域への不要不急の渡航はしないようにしてください。

⇒ 交通手段の確保は意外と可能(とくにタクシー)。しかし、値段がかなり上がっている。バス移動の途中でガソリンがなくなり、半日以上待たされた人もいた。


2.また、上記の影響を受け、カトマンズを含むネパール国内の各地域において、多くの車輌やバイクが各地のガソリンスタンド前に数百台からなる列を作り、道を塞いでおり、通れない箇所も多くある他、不満を持つ市民が小競り合いを起こしている状況です。現地の報道では、一部の燃料がインド国境を通過したなど、状況は今後改善されていくとの楽観的なものもありますが、全面的な回復には未だ時間がかかる見込みです。

⇒ 道が狭い上に、ガソリンスタンド付近の一車線は車で埋め尽くされている。一般車両はガソリンを入れることさえ許されていない状況なので楽観視できない。今後も状況は続きそう。

車線が一つ減り交通渋滞になっている場所もある
DSC0639277.jpg

列の先には閉鎖されたガソリンスタンド
DSC0639577.jpg


3.ついては、ネパールへの渡航・滞在を予定している方は、上記情勢に留意の上、報道等から現地の最新情報を入手し、状況に応じて旅行計画を変更・延期することも含め、自身の安全確保に努めてください。また、既に滞在中の方のうち、特にトレッキングや登山を予定している方は、ガソリンの入手が困難な状況に鑑み、カトマンズへ戻る移動手段の確保及び万一の移動できない事態を想定して、十分な準備をした上で行動するよう心掛けてください。また、交通遮断、交通渋滞、抗議デモなどには近づかないようにしてください。

⇒ エベレスト街道トレッキングの際、飛行機を使わず、サレリという町からバスでカトマンズに帰ってくる予定だった。しかし、あるはずのバスがいつ出発するのか目処が立っておらず、急遽ジープで帰ることにした。ジープも予約した翌日は満席で1日待たなければならなかったので、計画は余裕を持つべきだ。一方、国内線の飛行機は今のところ通常運航している。


以上より、確かに多少の混乱はあるが、大混乱にまで至っていない。
カトマンズにおいては治安も悪くなっていると感じたことはない。
これは、ネパール人の非常に穏やかな国民性の現れだろう。すぐにでも大規模な暴動が起こっていてもおかしくない状況なのだが、みんな危機感をそこまで感じていないのか、表情も明るい。本当に、のんびりした良い国だと思う。
一部、デモが起こっている(インド国境、インド大使館前など)ので、その地域に近づかなければ大丈夫だろう。ネパールからインド(逆も)に抜ける際、注意が必要だ。

こんな状況でも表情は明るいネパール人
DSC0625177.jpg



燃料不足が一体どれだけ値上げに影響しているのか?



長期滞在していると、色んな「お金」の情報が耳に入ってくる。
燃料不足で実際どれだけ値上げしているのか?
一般では入手できないガソリンやガスも闇取引があるらしい。
売り手から交渉してくるのだから、すごい商売だ。

ガソリン


不足前:120円/L
不足後:600~700円/L(闇価格)

約5~6倍

ガス(プロパンガスの1/3ぐらいの大きさ)


不足前:1800円
不足後:9000~11000円(闇価格)

約5~6倍

タクシー(空港~タメル地区)


不足前:400~600円
不足後:1200円 ~ ???

タクシーは一般車両に該当し、カトマンズでは闇でしかガソリンは購入できない。
交渉次第で価格の変動幅は大きい。夜間や早朝はさらに値段が高い。

ジープ(サレリ~カトマンズ)


不足前:2500円
不足後:3000~3600円

田舎ではまだ安価なガソリンが手に入るため、ジープが運行している。
今はさらに値上げしている可能性大。

飛行機(カトマンズ~ルクラ)


不足前:$150(片道)
不足後:$170(片道)

レストラン


5~50円程度、地味に値段が上がっている。
作れるメニューが限られる。
ガスが手に入らず、閉店しているお店も。
ガスの代わりに、ケロシンや炭、薪を使う店が増え、あの手この手で何とかやっていっている状況だ。

タメル地区の日本食レストラン「絆」もガス不足により閉店
DSC0635477.jpg
※ 現在はガスを入手し、10日振りに開店している。

商店


分からない程度値上げしている。
とくに、生鮮食品が値上げしている。
品薄になっている商店もちらほら見かけた。

ミルクティーを売っているおばちゃんがミルクティーを5円値上げしていた。しかし、1万円以上の闇ガス(通常のガスとの差額7500円)に手を出しているので、完全に赤字ではないだろうか。

リキシャ


燃料は食べ物なので、値上げはしていない。
ただ、食べ物の値段もあがっているので、便乗値上げしている可能性はある。

DSC0635177.jpg


全体的に値上げ中のネパール。
しかし、元々のベースが安い国なので、旅行に支障が出るほどのことではない。


経済制裁および燃料不足で影響が出ているところ


医薬品の供給


燃料だけでなく、医薬品の供給も妨害を受けている。
手術をする際に必要な医薬品が足りないらしい。
ネパールの医薬品はインドからの輸入品に頼っており、危機的状況のようだ。

学校の閉校危機


ガソリンがなければ、スクールバスが出せない。ガスがなければ、給食を作れない。燃料の供給がなければ、閉校せざるを得ないようだ。

ガソリン補給を待つスクールバス
DSC0639377.jpg


制限されるホットシャワー


ソーラーパワーでお湯を作る宿とガスでお湯を作る宿がある。
通常は、ガスでお湯を作る宿の方が高級宿なのだが・・・。ガスがないため、ホットシャワーが使えない、または時間に制限がある宿がでてきている。

航空便(国際線)の欠便・欠航・遅延


燃料不足のため、長距離飛行をする航空便にも給油ができない場合があるようだ。そのため、中国東方航空は減便、中国南方航空は運航をキャンセルしている。さらに、その他の国際線も3時間程度の短距離であれば問題ないが、長距離になると、ネパール以外の国で給油する必要があるため、1時間程度の遅延は考えておいた方が良い。ネパールでの給油が制限されていると推察される。



ネパール人の生の声



最後に、街中で聞いたネパール人の生の声を紹介しておく。

「仕方ないよね。まぁ、何とかなるでしょう」

「今はお祭り(ティハール)を楽しもう」

DSC0629977.jpg

「バナナが高くて、仕入れできなくなったよ」

「地震の次は燃料不足、今年はどうなってるんだ」

「手術用の医薬品が供給されないのは死活問題だ」

「ガソリンがない、ディーゼルがない、ガスがない、薬がない、電気がない」

「そのうちインドと中国に占領されて、ネパールがなくなってしまうのではないか」


悲観的な意見もたまにあったが、楽観的な意見の方が多かった。
危機的な状況にも関わらず、あの手この手で柔軟に生活していくネパール人の逞しさ。ガソリンやガスを買うためにいつもらえるのか分からない長蛇の列に文句も言わず待ち続ける人たち。頭が下がる思いだった。

4月に大地震に見舞われ、人々の生活が落ち着きを取り戻しつつあるこの時期に、復興のために不可欠である観光業に更なるダメージを与えたインド政府の行動は本当に信じられない。僕たちにできることは、リアルタイムに旅行者目線で実情を伝え、ネパールの現状を知ってもらうこと。一刻も早く、胸を張って「ネパール旅行は凄くオススメだよ!」と言えるようになる日を祈るばかりだ。

DSC0574477.jpg

ネパールの登山情報についてはコチラ
エベレスト街道トレッキング完全攻略【2015年10月】
関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加

こんな記事も読まれています

2015 / 11 / 26 | Category : 〔 その他 〕  | comments(0) | 

WHAT'S NEW?

▶ Comment

▶ Post comment

  •  お名前 : 
  •  タイトル: 
  •  アドレス: 
  •  URL  : 

  • 管理者にだけ表示を許可する