カンボジアは経済的には世界最貧国の一つであり、農業、観光以外に産業といえるものがないため、外国の援助に依存している。
経済的自立もできていないため、医療や衛生の分野でも大幅に整備は遅れている。

その原因として何よりも大きいのが、1970年代からのポルポト政権による知識階層の殺害だ。これによって医師、助産師、看護師などの医療職のほとんどがいなくなり、 内戦終了時に生き延びていた医師はわずか20人程度と言われている。内戦中には教育も存在せず、保健システムも崩壊した。その状況を打破することが如何に難しいかは、言うまでもない。

そんなカンボジアの医療制度の現状と、実際に行った病院を紹介する。


カンボジアの医療制度について


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カンボジアの病院は国公立、NGO(非政府組織)運営私立、富裕層向け私立の 3 つに大別される。
国公立病院と富裕層向け私立が有料、NGO 運営私立が無料である。

国公立病院や NGO 運営私立病院の医師の技術レベルは低く、設備も老朽化しており、医療サービスの水準は非常に低い。富裕層向けの私立病院は、タイやシンガポールを本拠地とし多国籍経営している病院の分院であることが多く、外国人や富裕層が利用する。

しかし、分院自体の医療機能はそれほど高くないため、重症な場合や手術を必要とする場合にはタイ・バンコクやシンガポールへ搬送されることも多い。海外搬送となると、数百万円の医療費が必要であるため、現地の住民が受けられる余裕はない。

と言うのも、カンボジア人の平均月収は1~2万円、大卒事務職の年収でも20~30万円あたりらしいので、払えるはずもない。
内視鏡検査が約2万円という状況なので、日本人の感覚に直すと、内視鏡検査に30~40万払う感覚だ。病院は非常に敷居が高い場所なのだ。

この敷居の高さは、カンボジアの保険制度にある。


カンボジアの保険制度


カンボジアでは公的な保険制度どころか保険という概念自体の普及も進んでいないのが現状だ。
とくに、貧困層は無料で受診可能なNGO運営病院しか選択肢がないのである。

カンボジアでは富裕層と貧困層の医療の2極化進んでいる。

そういう意味でも、公的な保険制度の拡充、医療設備・人材の充実が望まれるのだが、それにも課題が山積みだ。


カンボジアの医療制度、病院の課題


課題、問題点はありすぎるので、思いつくままに列挙していく。

保険


・ 国に予算がないので、公的な保険制度が立てられない

これに尽きる。
国が機能しないと、何も始まらない。

病院


<人材不足>
始めの方で記載したように、カンボジア内戦時に知識階層が殺害され、国内に医師が20名と言う事態に陥っている。現在でも1500万人の人口に対して3500人しかおらず、日本の1/10も存在しないという悲惨な状況が続いている。
しかも、その医師の中には適切な教育を受けていない医師が多い。
給与も低く、優秀な医師が残らない。

<専門医がいない>
適切な教育を受けていない医師が多いため、一般医はいるが、専門医がほとんどいない。
つまり、設備の問題もあるが、手術も行えない環境だと言うことだ。

<設備がない>
カンボジアの病院は、「問診・聴診 ⇒ 薬の処方」が一般的な流れだ。
血液検査や画像検査(レントゲン等)は基本的に行われていない。
と言うか、設備が整備されている病院も少ないのかもしれない。

そのため、カンボジア人は薬をよく飲む習慣がある。
日本では処方されないと買えないような薬が薬局で誰でも買える環境にある。

「病院にいくより、薬局に行く。」
この考えの住民が多いのではないだろうか。

この考え、昔も似たような国があった。
⇒ タンザニアの医療制度と病院 医者より薬剤師が重要

途上国は医療従事者、設備が不足し、安易に薬に頼る面が大きい。


課題解決の光


上記の課題のように「ない、ない、ない」と言っても、根底は「国にお金がない」「知識人が圧倒的に少ない」ことである。

内戦による弊害がカンボジアの復興に大きく影響しているのは言うまでもない。
過去に遡ることはできないので、「国内ではなく、外資に頼る。」
外資先導で、国内の産業を盛り立て、技術を身につけ、経済を回す。
カンボジアの再建には最も効果的ではないだろうか。

事実、国の方針として、医療機関は100%外資でも参入できるのだ。

サンライズ日本病院


外務省の世界の医療事情(カンボジア)にこんな一文があった。
「2016年10月にサンライズ日本病院が開設され一部の疾患に関しては当地で治療可能となりました。」


サンライズ日本病院
病床数:50床
診療科:13科(救命センター、脳神経外科、一般内科、外科など)
スタッフ:日本人医師は常時4–5人が在籍(日本人医療スタッフは20名)。カンボジア医師は7人。
設備:最新CT、超音波、血管造影の機器も設備
患者の9割はローカル、1割は日本人という比率。
ローカルの人をターゲットとしており基本は現金支払い。

とのこと。
診療科の数より医師数が少ないのが少し気になるが、カンボジア内で専門医による治療が受けられる数少ない病院として、期待されているらしい。
カンボジア医師7名も500名以上の応募の中から採用されたらしいので、学びたい医師が数多くいるが、学べる環境がないのが現状なのかもしれない。

カンボジアにいると、本当に日本からの支援が多い。
この病院も日本人スタッフが現地スタッフを教育し、カンボジア医療の基盤を築いていければ良いなと思う。
医療が整うと、企業誘致もやりやすくなる。

タイへの海外進出のしやすさの1つに医療の充実もあるんじゃないかなと思う。
⇒ タイの医療制度と病院 アユタヤでも日本と同等の医療が受けられるありがたさ


カンボジアの復興の鍵に外資による医療整備が1つが挙げられるのではないだろうか。


さて、非常に長々と書いてしまったが、カンボジアの病院に実際に行ってみた。


カンボジアの病院に行ってみた


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「Siem Reap Provincial Hospital」という病院に行ってみた。
州立病院なので、日本で言えば、市立病院に相当するのだと思う。
病院の中を歩いてみたところ、地元民しか入らない場所なので、無茶苦茶注目される(笑)
写真は撮れなかったが、病院っぽくない感じ。
平屋でホントにココは病院か…。
といった雰囲気。

病院の全部を見たわけじゃないが、どこが病院でどこが事務所なのか分からない病院だった。門構えは立派なんだけど、中身が伴っていない印象だ。

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カンボジアの病院のトイレ


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この病院のトイレに行ってみた。
シ、シンプルすぎる。

便器と水。
以上!

トイレットペーパーもなく、手洗い剤もない。
緑色の柄杓で全てを終わらせる。
貯められた水から柄杓で水をすくい、お尻を洗う、流す。

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カンボジアの一般病院のトイレからも、悪い衛生状態が分かる。
大便後、お尻を手で拭くのはどう考えても不衛生である。
それに加え、手洗い剤や消毒もない。

病院内の衛生状況改善は、トイレットペーパーの設置、手洗い、消毒の徹底から始めなければならない。
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2017 / 10 / 11 | Category : 〔 世界の医療制度 〕  | comments(0) | 

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